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学長スピーチ

 

2023年度国際大学(IUJ)修了式

学長式辞(和訳)

本日、国際大学(IUJ)の大学院課程を修了された2023年度修了生をお祝いするため一同が集まっております。国際関係学研究科から修士課程の学生92人、国際経営学研究科から修士課程の学生54人、そして国際関係学研究科から博士課程の学生2人を本日送り出せることを、喜んで報告いたします。

このキャンパスで日々、熱心に学問に励まれた修了生の皆さんと、ご家族の皆さまにお祝い申し上げます。皆さんのみならず本学一同もまた、皆さんの素晴らしい成果を誇らしく思います。

大変残念なことに、本日はナイジェリア出身のOsoba氏は同席することが叶いません。まだひと月も経たない5月31日、病気のためお亡くなりになりました。本学はOsoba氏が修了に必要な全課程を修めていると判断し、6月2日、最愛の奥様と多くの同級生が見守る中、Osoba氏のために修了式を行いました。本学の職員と多くの学生らがOsoba氏を偲び、その翌日の午後に特別なキャンドルライトサービスも企画しました。Osoba氏は多くの人に愛され、周囲の人々にとって大切な存在でしたので、皆が寂しい思いでいっぱいです。

さて、修了生の皆さんにとって、今日という日は過去と未来の境界線を示す日です。今日皆さんが終えて過去となるのは、学生としてのキャンパスライフです。その日を記念して、「graduation(卒業)」という言葉は、おそらくふさわしいものだと言えるでしょう。また一方で、皆さんは明日、新しい未来をスタートします。その未来とは、皆さんがグローバルリーダーとして貢献していく社会での職業人生です。始まりのその日を記念して、「commencement(始まり)」という言葉は、よりふさわしいものに思えます。多くの皆さんがご存じのように、このような理由から、米国では修了式を「graduation ceremony」ではなく「commencement ceremony」と呼ぶのが通例です。

その卒業の日という観点から、このキャンパスでの過去を振り返って、世界が協力する場であることはもちろん、学生が世界と日本について学べる場という2種類の場所として、IUJを皆さんの記憶にとどめてくれることを願っています。これは6年前に私がIUJの学長に就任して以来、重視するようになった2つのコンセプトです。

本学は、さまざまな分野における世界標準の理論を学べるだけでなく、日本が非西洋圏で初めて独力で工業化を果たした国として、その発展の歴史の背景にある数多くの論理を学べる場所でもあります。

2つ目のコンセプトは、本学が「世界が協力する場」であるということです。以前は、本学は「世界が集まる場」だと言っていました。世界中からただ集まるよりも、むしろ協力するほうがもっと良いのでは、と私は思います。本学は、大小さまざまな国際協力がとても自然に、しかも頻繁に生まれる場所であり、学生が文化を超えてスムーズに協力する術を学ぶ場所です。国際協力は本学の環境から極めて自然に生じる結果だと考えられます。

「世界が協力する場」を象徴する素晴らしい事例が、約1か月前に開催されたインターナショナルフェスティバルでの国際コーラスです。ここでは、各国出身の本学学生が近隣の新潟県立情報高等学校の日本人生徒と共演しました。美しいハーモニーのみならず、多くの皆さんが真剣に準備されていたことに、私はとても感動しました。

その始まりの日という観点から、社会に出る皆さんの将来に目を向けてみると、スティーブ・ジョブズが卒業式で行ったスピーチの有名な一節がごく自然に頭に浮かんできます。ジョブズ自身は大学を卒業していませんが、当時アップル社のCEOだった2005年に、スタンフォード大学の卒業式でスピーチを行いました。

ジョブズは愛読書の中からとても気に入っていた2つのシンプルな文を引用して、印象的なスピーチを締めくくりました。ハングリーであれ。愚かであれ。

私もこの言葉が大好きです。

修了後、皆さんが人生で実現したいもののために、ハングリーであり続けてください。明日から全く新しい人生と未来が始まります。不確実性の多い未来で唯一確かなことは、多くの困難や障害に遭遇するということです。しかし、ハングリーであり続け、愚かであり続ければ、そのような障害を乗り越えることができます。不確実な未来に対して十分に愚かで、楽観的で、ハングリーである者だけが、とても特別なことを達成できるのです。

そして、私たちは十分に愚かであると信じています。皆さんは愚かにも、何か特別なことを期待して、2年前に浦佐というこの小さな町にある孤立した日本の大学、IUJ(「Isolated University of Japan」の略語)にやって来ました。私は愚かにも、これほどの国際的な多様性を持つこのユニークな大学は日本にとって宝だと考え、6年前にIUJの学長職を引き受けました。

しかし、ここに到着してしばらく過ごしてみると、私たちは皆、結局のところそれほど愚かではなかったことが分かりました。この場所が貴重な宝石のようだと気付いたからです。宝石というのは、皆さんのような人々、そして田園地帯や自然のことです。キャンパスの周辺には、自然に関するスピリチュアルなものがあります。

夏には緑の田園から、冬には壮大な白雪から、そして1年にわたって美しい山々から、キャンパスの内外でエネルギーを得ることができます。雄大な風景とは言えないかもしれませんが、朝霧、明るい日差し、薄雲やキラキラ輝く雪から、この宝石のような自然からエネルギーをもらって、生き返ったような気になることが多々あります。多くの皆さんに同感していただければと思います。

多くの学生がIUJのことを「I and U in Jail」の略語、つまり「牢獄の中にいる私とあなた」と冗談交じりに呼んでいますね。ですが、IUJは「Jail」ではなく「I and U in Jewel」の略語、つまり「宝石の中にいる私とあなた」だと思います。

それでは、本日のスピーチを終えるにあたり、愚かであり続けること、ハングリーであり続けることを忘れずいましょう。また、このIUJは、人と人との最高の異文化交流、そして自然との最高のスピリチュアルな交流が生まれる特別な場所であることを忘れずにいましょう。皆さんはそんな大学を誇りに思うことができますし、皆さんが将来、記憶の中であれ、直接であれ、何度でも戻ってきたいと思う場所であることを願っています。私たちはいつでも皆さんを歓迎いたします。

重ねてお祝いを申し上げるとともに、皆さんの幸運をお祈りいたします。

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