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学長スピーチ

 

2022年度国際大学(IUJ)修了式

学長式辞(和訳)

ここに集まっている私たち全員にとって、今日はとても特別な日です。と言いますのも、国際大学で皆さんが歩んできた長い学問の道が終わる日であるだけなく、非常に困難だった2年間の終了を、私たちのキャンパスで大規模な新型コロナウイルスの集団感染を起こさずに、祝うことができる日でもあるからです。本学の学長として、修了生、学生、教員、職員の皆さんを大いに誇りに思います。

本日は大変光栄なことに、非常に特別なご来賓、麻生太郎元首相をゲストスピーカーとしてお迎えし、皆さんへのご祝辞を賜ります。また、JICA、南魚沼市の代表の方など、国際大学(IUJ)をさまざまな面で支えてくださっている団体を代表するご来賓の方々にも、多くお越し頂いております。さらに、本日は様々な国の大使館の代表の方々がとても多くお越しいただいていることを光栄に思っております。ブルキナファソ、ボツワナ、エチオピア、ガーナ、インド、ナイジェリア、東ティモール、トーゴ、ジンバブエ、ミャンマーよりお越しいただいております。とりわけ、駐日ミャンマー連邦共和国特命全権大使であります、ソー・ハン閣下が本日こちらにいらしておりまして、彼は国際大学の修了生です。国際大学にお帰りなさい!

国際関係学研究科から修士課程の学生93人、国際経営学研究科から修士課程の学生47人、そして国際関係学研究科から博士課程の学生1人を本日送り出せることを、喜んでご報告いたします。ここIUJで熱心に学問に励まれた修了生の皆さんと、ご家族の皆さまにお祝い申し上げます。皆さんはご自身の素晴らしい成果を大変誇りに思っていいのです。

この数週間、キャンパス内では平常時へ戻ろうとさまざまな方法で取り組んではいますが、パンデミックにより、世界中で人々の生活があらゆる面において変化してしまいました。特にIUJに関連しているのは、以前に比べて国境がさらに厳重になり、世界中で人々の自由な移動が大幅に制限されていることです。通常のタイミングでキャンパスに来ることができなかった本学の学生の多くやご家族も、その影響を受けています。ある意味では、世界が切実に必要としている国際協力のための多くの活動、特に多数の開発途上国の発展に向けた活動が、パンデミックによって突然制限されたのです。今年勃発したウクライナでの戦争も、残念ながら、国際協力にさらなるブレーキを掛けました。

このパンデミックという災害を、私たちにとってさらに有意義なものにする方法の1つとして、今後の生活を豊かにするために、この経験を内省し、教訓を学ぶことが挙げられます。世界のさまざまな場所で物事が通常に戻りつつある今は、ストレスが多かったパンデミックの2年間を振り返るよい機会です。私たちの社会が各々どのように機能しているかを深く考えるため、すべての社会に共通している、このパンデミックの影響についてさまざまな内省を行ってみませんか。

私も、自分自身の社会である日本社会について内省しました。私が考える、日本社会がどのように機能しているかがわかる例を、ご紹介したいと思います。東西問わず世界の他の先進国と比べ、日本がロックダウンもせずに新型コロナウイルスの感染率を非常に低く押さえられた理由を問うことにより、内省しました。1つデータを挙げると、2022年6月10日時点でのアメリカのコロナウイルスによる死者は、人口100万人あたり3,093人ですが、日本はアメリカのわずか8%の245人です。アメリカとの比較よりもやや控えめではありますが、ヨーロッパ諸国や韓国との同様の比較も容易に行えます。

日本での感染率がとても低い主な理由を2つ、本日は取り上げたいと思います。

1つ目は、コロナ禍であるかを問わず、日本社会では非常時に一般市民が自粛する傾向があるということです。

2つ目は、多くの日本人がほぼ無意識に行う、日常的な「追加の」行動が、ウィルスの蔓延を抑えるのに大変役立ちました。このような「追加の」行動とは、他者のための特別な配慮や、一手間のことです。

コロナ禍での特別な配慮の例としては、他者を感染させないよう、また、他者から感染しないよう、非常に多くの人がマスクを着用していることが挙げられます。そして、コロナ禍での一手間としては、非常に多くの人がうがい・手洗いを頻繁に行っていることが挙げられます。

とはいえ、こういった「追加の」行動はコロナに限ったことではなく、多くの社会活動の中でうかがうことができます。例えば、工場では現場作業員が、チームワークのための特別な配慮や細部にわたる特別な注意をして協力しています。これが、日本企業が驚くほどのコスト削減と品質向上を達成できる理由の1つです。

しかしながら、自粛や「追加の」行動により、マイナスな副作用が発生することもあります。多くの社会的行動に当てはまるように、マイナス効果は、社会の強みとまさに隣り合わせに生まれる傾向があります。

私が最も懸念している明確なマイナス効果は、自粛と必要以上に慎重な行動により、人々の考え方が自ずと萎縮していく可能性があるということです。人々がお金を使うのに慎重になりすぎ、消費や投資の縮小へとつながっていきます。これが原因で、日本でのパンデミックの直接的なダメージははるかに少ないにもかかわらず、日本経済の立ち直りは、他国に比べて勢いが大きく劣ることになるでしょう。ですので、日本活性化のための特別な配慮、特に日本人の考え方への心理的な後押しが、今の日本とって大変重要なのです。

皆さんの多くが帰国された際には、パンデミックに立ち向かうために自国の人々が行った多くの努力はもちろん、ご自身の社会がパンデミックから受けた多くのダメージを観察し、その社会を内省していただきたいと思います。観察した後は、顕著な事象に焦点を当て、理由を考えてみてください。皆さんの社会がどのように機能しているかを内省するための、素晴らしいスタートとなるでしょう。

さらには、皆さんに内省文を学長室へ送っていただきたいとさえ思っています。本学ウェブサイト上の特設サイトに内省文を国別にアップロードするので、皆さんに読んでもらいたいのです。そして、ご自身の中で、異なる社会による異なる対応を比較してみてください。ここIUJには50を超える国からの修了生がいるということは、このような国際比較において非常に有用であると言えるでしょう。皆さんの内省文の多くを読んだ後、皆さんの結論を要約・比較し、その中から一般化できる仮説を引き出し、私自身の考察文をアップロードします。

内省文には成績はつけないとお約束しますので、どうか心配せずに提出してください。ですが、皆さんが帰国されたら、IUJは大変素晴らしい大学だが、学長が修了式で修了生に新たに宿題を出すひどい大学でもある、と冗談を言いたくなるかもしれませんね!すみません。

最後にはなりますが、新型コロナウイルスによりストレスのたまる制限が数多くあったにもかかわらず、ここIUJでの経験が、皆さん全員にとって非常に実りあるものであったと願っています。そういった実りある経験は、IUJが提供する環境や、皆さんのここでの学びを安全かつ有意義にするための本学教職員による多大な努力に負うところが大きいのではないでしょうか。

5年近く前に本学の学長に就任した際、本学のユニークな価値に当然ながら大いに感銘を受けました。本学は異文化交流のための極めて特別な場所です。日本の農村地域に所在しながら英語だけを授業言語とする大学であり、ここでは国際標準カリキュラムが遂行され、50を超える国から来た学生がキャンパスで生活を共にしています。私は、IUJの価値を日本の宝と呼んできました。

今回のパンデミックが終息し、国境が解放された暁には、パンデミックで失った時間を取り戻すために、さらなる国際協力に向けて努力する必要があります。IUJのまさに本質ゆえに、本学にはこの将来像において果たすべき特別な役割があると思います。

本日、修了していく学生の皆さんにお願いしたいことは、教室での議論、寮でのグループ活動、学園祭、あらゆるスポーツイベントを問わず、多くの皆さんが今まで大学の活動の中でとても自然に行ってきた国際協力を、修了後も続けていただくことです。世界のさまざまな地域で、皆さん全員に国際協力のリーダーになっていただきたいのです。そうすることで、パンデミックで人々が国境を越えられない状況、そしてウクライナでの悲しい戦争が引き起こした国際的な安全保障環境の急変により、国際協力の必要性が非常に強くなっている世界に、私たちは大きく貢献することができます。

本学はこのように異文化交流のための特別な場所であり、日本の宝なのですから、皆さんが修了後に、しばしば記憶の中で、そして時には実際に、再び訪れたい場所であり続けることをひたすら願っています。いつでも皆さんがまた訪れてくれることを歓迎します。

このように前もって歓迎の言葉をお伝えしましたが、改めてご修了おめでとうございます。皆さんの幸運をお祈りいたします。

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