在南スーダン日本国大使館 書記官 大栗 彩さん

多様な価値観をつなぎ、世界の課題に向き合う――IUJから始まった国際協力のキャリア

JICA海外協力隊としてガーナで地域開発に携わった後、国際大学(以下IUJ)の国際社会起業家プログラム(ISEP)へ進学。IUJ修了後はUNDP(国連開発計画)を経て、現在は在南スーダン日本国大使館で書記官(経済協力班長)として、日本の政府開発援助(ODA)に携わる大栗 彩さん。民間企業、開発現場、国際機関、そして外交。それぞれ異なる立場を経験する中で一貫しているのは「異なる立場や価値観をつなぎ、より良い解決策を導き出す姿勢」でした。IUJでの学びは、世界の最前線で働く現在の仕事にどのようにつながっているのでしょうか。

現場で感じた「もっと学びたい」という思い――IUJへの進学

在南スーダン日本国大使館で経済協力班長として勤務する大栗 彩さん。世界の最前線で国際協力に携わっています

新卒で精密機器メーカーに入社し、グローバル人材育成や海外拠点との連携に携わった大栗さんは「開発途上国の現場で人々とともに課題解決に取り組みたい」という思いから、JICA海外協力隊としてガーナへ赴任しました。現地では女性のエンパワーメントやコミュニティ開発、住民参加型の地域づくりに携わる中で、現場だけでは解決できない課題に数多く直面します。

「活動を続けるほど『なぜ同じ課題が繰り返されるのか』『制度や政策は現場にどのような影響を与えているのか』という疑問が大きくなりました」

より大きな視点から国際協力を学びたい。その思いが、IUJへの進学へとつながりました。

JICA海外協力隊としてガーナ北部の開発NGOで活動。現場経験が、開発政策を学ぶ原点に

多様な価値観の中で培った、課題解決に向き合う力

大栗さんがIUJを選んだ理由は、日本にいながら世界中の学生と英語で学べる環境。国際経営学研究科 国際社会起業家プログラム(ISEP)で学びながら、IUJの特徴の一つであるクロスレジストレーション制度を活用し、国際関係学研究科の授業も履修。政府職員、民間企業など、多様なバックグラウンドを持つ学生と、ケーススタディやグループワークを重ねました。

「一つの課題に対しても、全員が同じ考えということはありません。異なる価値観を持つ人と議論を重ね、お互いの立場を理解しながら現実的な解決策を見つけていく。その経験が、今の仕事の土台になっています」

英語力だけではなく、異なる価値観を持つ人と合意形成を図る力や、自分の考えを論理的に伝えるプレゼンテーション力が身についたと振り返ります。

国際経営学研究科カウンシルメンバー(学生委員会)として活動。多様な背景を持つ学生と交流し、学内コミュニティづくりにも携わった(大栗さんは右から4人目)

IUJから国際協力の最前線へ

ジュネーブで開催された平和構築に関する国際会合(DDR会合)に参加

IUJ修了後はUNDP(国連開発計画)アフリカ地域サービスセンターに勤務し、日本とアフリカの協力枠組みであるTICAD関連業務を担当しました。地域サービスセンター、TICADユニット、またUNDPエチオピア事務所の三つの組織を横断しながら、エチオピア北部紛争後の復興支援や平和構築案件に携わり、日本政府、アフリカ連合(AU)、国際機関など、多様なパートナーとの連携を経験しました。地域全体を俯瞰する視点と、現場で案件を実施する視点の双方から、マルチラテラルな開発協力を実践的に学べたことは、その後の外交の仕事にも大きく生きています。

現在は、在南スーダン日本国大使館で書記官(経済協力班長)として、日本の政府開発援助(ODA)案件を担当。現地政府、国際機関、JICA、NGOなど、多様な組織と連携しながら、人道支援や教育、インフラ整備、平和構築など幅広い分野の案件を調整しています。

「この仕事は、IUJで経験したグループワークに少し似ています。立場や優先順位が異なる関係者と議論を重ね、お互いを理解しながら現実的な解決策を見いだしていく。その積み重ねこそが、今の外交・開発協力の仕事そのものだと実感しています」

世界銀行による南スーダン・エネルギーセクターアクセス・制度強化プロジェクト(ASSIST)の開会式にて(大栗さんは写真左)

UNDPアフリカ地域サービスセンター(アディスアベバ)で同僚と

変化する国際協力の現場で、これから目指すもの

最後に、これからの国際協力のあり方と、ご自身の今後について伺いました。

「国際協力を取り巻く環境は、今、大きな転換期を迎えています。世界的な財政制約や地政学的な変化の中で、限られた資源をいかに効果的に活用するかが、これまで以上に問われています。南スーダンのような国では人道支援は依然として不可欠ですが、その先にある復興や自立的な発展へどうつなげていくかが重要です。政府、国際機関、民間企業、そして現地の人々が、それぞれの役割を果たしながら協力していくことが、これからの国際協力には必要だと考えています。

今後は、これまでの開発協力や外交の経験に加え、民間セクターの役割についても理解を深め、援助だけに依存しない持続可能な発展に貢献できる人材を目指していきたいと考えています。振り返ると、IUJで学んだ一番のことは、異なる価値観を持つ人たちと議論を重ね、相手の立場を理解しながら、正解のない課題に向き合い続ける姿勢です。IUJでの出会いや学びは、今でも私のキャリアを支える大切な財産です。」

正解のない課題に向き合い、多様な人と協働して解決策を探る力――。それは、IUJが大切にしてきた学びの姿勢であり、世界で活躍するための大きな力になります。世界とつながり、未来への一歩を踏み出す学びが、ここから始まります。

※本記事の内容は2026年8月時点のものです。所属・役職・業務内容等は取材時点の情報に基づいています

国際社会起業家プログラム(ISEP)について詳しく見る

国際社会起業家プログラム(ISEP)とは?

国際社会起業家プログラム(International Social Entrepreneurship Program:ISEP)は、国際協力や社会課題の解決を担うリーダーの育成を目的としたIUJの教育プログラムです。

英語による大学院教育に加え、経営学・公共政策・国際関係などを横断的に学び、多様なバックグラウンドを持つ学生との議論や協働を通じて、世界の複雑な課題に取り組む力を養います。大栗さんもこのプログラムで学び、現在は在南スーダン日本国大使館で、日本の政府開発援助(ODA)に携わっています。

※IUJでは「クロスレジストレーション制度」により、所属する研究科以外の選択科目も履修が可能です