HOME > 非公開: 修了式スピーチ2022 > 来賓スピーチ

来賓スピーチ

2022年度国際大学(IUJ)修了式

祝辞(和訳)

ご丁寧にご紹介をいただきありがとうございます。私は麻生太郎です。

今日、私は大変幸せです。周りを見渡すと、皆さん一人ひとりが幸せそうに、とても幸せそうに見えるからです。

ミャンマーからの留学生はどこにいますか?ベトナムからは?インドネシアからは?スリランカからは?

いいですね! 今日は140人以上の修了生がいるのですよね。

どうですか?幸せですか?もっと大きな声で言ってください! もう一度聞きますよ、あなたは今、幸せですか?

私も今日は幸せです。なぜなら、今日は皆さんにとって最も幸せな日だからです。

 

皆さんはコロナ禍を勝ち抜いた人たちです。そしてZOOMの達人でもあります。多くのことがオンラインで行われ、直接会うことが少なかったのですよね。それはとても悲しいことですよね?

それでも、そのような状況でも、皆さんはたくさんの友達を作り、友情を育みました、永遠の友情を。

 

学位は何ですか?修士号ですか?博士号ですか?

それはあなたのダイヤモンドです。貴重なものです。ご両親に見せるためのものです。

しかし、友情はもっと重要です。もっと貴重なものです。

友情はあなたの心に残り、これから50年、60年と、あなたが落ち込んでいるときにあなたを温めてくれます。

 

修了生の皆さん! 誇りを持って、背筋を伸ばしてください。皆さんは、最悪のパンデミック、最悪の環境の中で、多くのことを成し遂げてきたのですから。

 

40年前の1982年にIUJは設立されました。その実現に尽力した二人の人物がいました。銀行家の中山素平氏と、彼の生涯の友であり、戦時中にアメリカの強制収容所で苦難を味わった日系アメリカ人のジョージ・イシヤマ氏です。

中山氏は、パナソニックの創業者である松下幸之助氏をはじめ、多くの人たちから支援を受けるために努力しました。ジョージ・イシヤマ氏はいつも 中山氏を助けてくれました。中山氏とイシヤマ氏の友情が、この学校をゼロから作り上げました。

これは40年前のことです。当時、日本には英語だけで授業をする学校はありませんでした。二人にはビジョンがありました。そして、そのビジョンは実を結びました。現在、IUJはアフガニスタンからジンバブエまで、バングラデシュからザンビアまで、各国の将来のリーダーが集まる拠点となっています。

 

この度修了される皆さんに、私は次のように申し上げたいと思います。あなたたちは日本で成功したのですから、将来どこに行っても成功することができます。高すぎる山なんてない、と言われるように、自信を持ち、自分を信じてください。

 

皆さんの母国で木を育てるには10年、20年、30年かかるでしょう。あなたが誇れる木、あなたの子供や孫が誇りに思えるような木です。

根気よく、本当に辛抱強く、自分の一歩がどんなに小さくても、いつか大きな一歩になると信じて育てるのです。

もし、あなたが無理なら、あなたの子供が、その子供の子供たちが、そうしてくれるでしょう。それしかありません。それが、木を育てる唯一の方法です。

そして、その木こそが民主主義なのです。

簡単なことではありません。それはわかっています。しかし、やってみる価値はあります。だから、やってみるのです。

 

首相と財務大臣としての私の仕事は 世界経済を救うことでした。そしてルールに基づく秩序を維持することでした。

 

私が首相になったのは2008年、リーマン・ショックから9日後でした。

世界中の市場が凍りつき、市場は機能しなくなったのです。

11月にG20の会合がありました。そこで私は議論をリードし、日本政府がIMFに1,000億ドルを融資することを約束しました。

 

これは膨大な額でしたが世界を救うためにとても役立ちました。

時には、大きく考え、大きく行動しなければなりません。私の指導する日本は、信頼できる最高の消防士の役割をはたしました。私は今でも、世界経済を危機から救うために私がしたことを非常に誇りに思っています。

 

また、現在アジア開発銀行の総裁である浅川雅嗣氏とともに、多くのことを成し遂げたことも良い思い出です。

私、浅川氏とその仲間たちは、9年という長い年月をかけて、国際社会をリードし、100年ぶりに国際課税のルールを最も大きく変えることに成功したのです。そうですね、それは100年に一度の大仕事でしたね。

 

最近では、企業は根なし草のように、移動が可能です。各国政府は、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルのような大きなインターネット企業に課税することができませんでした。

彼らはどこにでもいるからです。

地上ではなく、空に浮かぶ雲の中にいる企業にどうやって課税できるのでしょうか?

これは、”税源浸食と利益移転(BEPS)”と呼ばれています。何か手を打たなければならなかったのです。

 

また、法人税の減税競争が起こっていました。ほとんど近隣窮乏化政策みたいなものでした。

 

2013年5月にイギリスのバッキンガムシャーで、G7の財務相会議がありました。そこで私はある提案をしました。私は、法人税の底辺への競争に終止符を打つよう求めました。

デジタル化の時代には、新しい強固な国際的な税制の枠組みが必要だと訴えました。するとどうでしょう。私の提案に好意的な発言をしたのはドイツだけでした。

 

それでもついに、2021年10月、136の国と地域が国際的な税制の改革に合意しました。 この改革には、法人税の最低税率15%の導入や、巨大多国籍企業の脱税防止策などが盛り込まれています。

その後、G20の財務相と中央銀行総裁がこの合意を承認しました。これは歴史的な快挙でした。私たちは成功し、とても嬉しく思いました。

 

私は、政府のために働いたのでしょうか?日本のために働いたのでしょうか?日本人のために働いたのでしょうか?

その答えは、「イエス」「イエス」「イエス」です。

しかし、一方で私は、浅川氏のような有能な同僚に助けられながら、世界経済を救うために、そして堅牢で強い、耐久性の高い新しい制度を構築するために懸命に働きました。

 

2022年修了の学生の皆さんに申し上げますが、私が公僕として最もやりがいを感じたのはその時です。 なぜなら、私の小さな貢献が世界経済にとって大きな意味をなしたからです。

 

皆さんが将来、困難な課題に直面したとき、きっと同窓の仲間に助けを求めることでしょう。クラスメイトからアドバイスを求める連絡がくることもきっとあるでしょう。そうやって、IUJはあなたの人生の中でずっと生き続けるのです。

 

さて、偉大なる銀行家、中山素平氏は、IUJの学生は全員キャンパスで生活することを主張しました。中山素平氏と彼の生涯の友であるジョージ・イシヤマ氏に、空を見上げて「あなた方の構想は実を結びました」と言ってみてはどうでしょう。なぜならあなた方は末長く続く友情をここで築いたからです。

 

私は、あなた方が生涯にわたってこのキャンパスを大切にすることを、確信しています。なぜなら、ここにあなたの故郷があるからです。

 

本日はおめでとうございます。今日は修了式の日です。残りの人生の最初の日です。ご清聴ありがとう、そして皆さんの幸運を祈ります。

 

実際のスピーチはこちら